小説置き場(借)

えっちな小説でもそのうち。

『考える事は同じ』

全年齢対象小説

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「知ってる?東の地方では『七夕』っていう行事があるんだよ」

放課後、学校が終わり帰る俺の隣を歩く彼女、ミラがそう話す。

「七夕?それってなんの行事なんだ?」

「ん~…実は私もイマイチ知らないんだよね…小さな紙にお願いを書く、って言うのは知ってるけど」

「ふーん…そんな行事があるんだな」

紙にお願いを書くか…いわゆる神頼みって奴か?紙だけに。

「…君、紙と神を掛けたダジャレ考えてたでしょ」

ミラがジトっとした眼で此方を見てくる…どうやら長年の相棒にはバレバレな様だ。

「…ミラせんぱーい、ガーフィスせんぱーい!」

後ろから聞きなれた声が聞こえる、ミラと俺は後ろを振り替えると、遠目に手を振ってる白髪の彼女がいた。

「セリアだね」

「だな、どうせだし皆で帰るか」

「うん、そうだね折角だし」

そんな会話をしてからミラはセリアに向かって手招きした。
それにセリアも気づいたのか、少し小走りで此方に走り、合流した。

「よかったー、お二人共まだ帰る途中だったんですね、合流できて良かったですよホント」

少し息を切らせつつ、セリアはそう言う。タイミングが合えば一緒に帰ることが多い。

「でもセリア、今日は日直で遅くなるって言ってなかったっけ?」

「ええ、ですが気合いで終わらせてきましたよ!」

ちょっぴりドヤ顔でえっへんと言わんばかりに胸を張る。
張るほど胸は無いのが現実なのだが…

「…ガーフィス先輩、今失礼な事考えたでしょ~?」

ミラに続き、セリアにもジトっとした眼で見られる。
やはり長年の家族関係は伊達ではないな…

「ところで今日は七夕らしいですよねぇ、お二人共知ってます?」

その言葉を聞いて俺とミラは少し小さく笑ってしまう。

「…え、あれ、私 変な事言いました?」

「いや変な事じゃないさ、さっきまで俺とミラも同じ話をしてたんだ」

「ありゃ、凄い偶然…でもそれなら話す手間が省けますね、ちょっとこれを見てください」

セリアは背負っていた小さめな学校鞄から、カラフルな紙の束を取り出した。

「クラス行事で短冊にお願い事を書きましょうってのがあるんですけどね、もし良かったらミラ先輩とガーフィス先輩も一緒に書きませんか?」

なるほど、七夕を実際にやってみようと言う事か…中等部は行事を大事にする感じで少し羨ましい。

「面白そうだな…もちろん良いぞ、ミラは?」

「うん、確かに面白そうだからね…私も書いてみたいな」

「やった!折角だし、皆で書きたいですからね…そうだ、このまま先輩達のお家に行っても良いですか?」

「そっちの家に帰ってから、また俺達の家に来るのも大変だしな…問題ないぞ」

「なんだったら今日は泊まっていったら?服とかは此方にも置いてあった気がするし…アレだったら私の貸すしさ」

「やったー!」

泊まりでセリアは大はしゃぎだ…正直セリアの事だし、それが本当の目的な気もするが…まぁ言わないでおこう。

「…あ、だとしたら夕飯の材料も買いに行かないとね、まだ決まってなかったし…セリアはなに食べたい?」

「そうですね…たまにはシチューとか食べてみたいかも…」

「お、良い感じに決まったな…じゃあこのまま買いに行っちまうか」

「「はーい」」

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あの後、スーパーでシチュー用の材料等を買いそろえた。

セリアが材料探しをしてる間に全員別々に行動をしていたが、ミラがデザートコーナーに向かってデザートを眺めていた所を見つけてしまい…結局プリンを3つ買ってしまった。

買ったとはいっても『流石に悪いから』と強引に半額をミラが出したんだが…こう言うのは男に払わせておけば良いのに、変な所で意地っ張りなのがミラらしい。
その後はセリアと合流し、帰路についた。

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早速夕飯になり、ミラとセリアが切った材料を俺が鍋で煮込む。
セリアは包丁をあまり握った事が無いらしく、慣れない手つきだったが…ミラに教えて貰って何とか切れた様だ。

…因みに何で俺が煮込む係なのかと言うとミラとセリア、どちらも『ガーフィスの作るシチューは野菜が柔らかくて美味しい』との事らしい…
誰が作っても似たような物な気がするが、俺はミラやセリアが作る方が美味く感じる辺り『他人が作る料理』は特段に美味しく感じるのかも。

シチューが完成して夕飯時、ミラもセリアも美味しいって言ってくれたのは嬉しい…
結構多めだったのだが完食してしまう辺り、その言葉は嘘では無いのだろう。

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「ふー…お皿洗いもやっぱり、二人でやると速く終わるね」

「そうですね~、これくらいのお手伝いならいくらでもしますよ!」

「ふふ、ありがとうね、ガーフィスもお皿拭いて片付けてくれてありがとう」

「これくらいはやらないとな…俺はシチューを煮込んでただけだし」

そんなこんなで夕飯も終わり、洗い物等も終わらせて一息つく。

「…そう言えば今日の帰りの時に行ってた七夕の話、覚えてます?早速書いてみませんか?」

一口麦茶を飲み、セリアはそう言ってきた。確かに夕飯も終わって夜だし、丁度良いのかもしれない。

「そうだな、今書いてみるか」

「そうこなくては!では紙…いや短冊って言うんですよねこれ…何色が良いですか?沢山ありますよ~」

先程の学校鞄から再びカラフルな紙の束…もとい、短冊を机の上に取り出す。

「私は…赤色が良いかな、ある?」

「もちろんです!どうぞ~」

ミラに赤色の短冊が手渡される。
確かに赤色はミラのイメージが大きく、一番ミラらしい色だ。
…巻いてるマフラーが赤色だからか?

「俺は青…って七夕って青色をやっても大丈夫なのか?」

「うーん、昔は青は緑と扱われるみたいですが…現代では沢山の色の短冊がありますし、大丈夫じゃないんですかね?」

青色の短冊を手渡される。
純粋に青が好きなのもあるんだが…昔は青が緑扱いだったのは初耳だ。

「私は…緑色にしましょうかね」

「セリアと言えば白色の他には、胸に着けてるブローチの緑色だもんね」

「えぇ、このブローチは大事な物ですからね…誰かさんに誕生日プレゼントに貰えた物ですから」

セリアはチラッと俺の方を見る。
あのブローチを見た時、絶対セリアに似合うと思って渡したから、そう言われると何か…照れるな。

「もちろん、ミラ先輩から貰った緑色の音符形ヘアピンも使ってますよ!無くしたくないので外で着けれないのが残念ですが…」

「確かに小さい物って無くしやすいからね…大事に使ってくれてるだけでも嬉しいよ…さて、書こうか」

「はーい」
「はいよ」

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3人がペンを持って少し時間が経過する。

「…二人とも、書けた?」

お願い事を書き終わったのか、ペンを置いてミラは口を開く。

「私も今、書けましたよ~」
「俺も書けたぞ」

「なんだ、結構二人ともすぐにお願い事書けてたんだね~…ところで、少し思ったんだけどさ」

恐らく最初に書き終わったと思ってたミラは少し残念そうに話し、更に続ける。

「…この家って笹が無いよね、どこに付ければ良いんだろ?」

そう、笹が無い。
ギリギリ観葉植物は1つあるが、流石にそれは七夕では無い気がするし…

「…た、確かに…うーん……なら明日、私のクラスの七夕に付けときましょうか?言い出したのは私ですし」

「クラス行事的に良いのかそれ…?」

学年が違う俺達の短冊を付けるのは、セーフなのか微妙な所だ…

「さてさて、お二人共、お願い事は何て書きましたか?」

早速と言わんばかりに聞いてくる。確かに二人のお願い事は少し気になるが…

「俺は……まぁ、想像に任せる」

「何と…それは凄く気になりますね……女の子に挟まれるハーレム天国になりたい、だったりして?」

セリアはニヤニヤとそう言ってくる。
確かに全世界の男の夢ではあるけどな…少なくとも俺は違うお願い事だ。

「流石の俺でもこんな日にそんなお願い事はしないぞ…?」

「冗談ですよ~、ガーフィス先輩ってあまり欲が無さそうですからね…それで、ミラ先輩は?」

話はミラに振られる。

「私?私は……少し何だか、恥ずかしいかなぁ、言うの」

ミラは言いにくい程に恥ずかしいお願い事らしい…どんなお願い事なんだろうな…

「ほほう、ミラ先輩が恥ずかしい程のお願い事とは…気になりますが、無理に聞くのは野暮と言う物ですね…さてさて」

セリアにしては何だか大人しく引き下がったな…セリアは更に言葉を続ける。

「短冊も書き終わった事ですし、皆で夜中までゲームしませんか?ついでに今日は皆で一緒に寝たり!」

夜中までゲームに、一緒に寝る…
でも明日は平日だし、仮にも二人は女の子なんだからなぁ…

「おいおい、流石にベッドに三人はキツいと思うけどな…」

「まぁまぁガーフィス、たまには良いんじゃないそう言うのも…それに布団2つを床に敷けば寝れなくは無いと思うよ」

何とか断ろうと思ったがそこにミラが言葉を繋げる。
確かにその方法なら三人で寝れなくも…そう言う問題じゃ無い気が…まぁいいか。

「…そうだな、たまには良いかもな」

「わーい!それじゃ、ガーフィス先輩の部屋でー………」

そんな会話をしつつ三人がリビングを出る時、机の上に伏せて置いてあった3枚の短冊は、窓から吹いた小さな風で舞い、床に落ちた。

3枚とも表側になってしまったが、赤色、青色、緑色の短冊にはほんの一部は違うとはいえ、同じ事が書かれていた。


『いつまでも三人一緒にいられますように』